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抵当権と根抵当権の違い|あなたのケースはどっち?費用と借入の実務判断
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| 執筆者氏名 | 「お金のトリセツ」編集部 |
|---|---|
| 所属 | セゾンファンデックス |
| 執筆日 | 2026年02月27日 |
目次
事業を運営する経営者様にとって、不動産を担保にした資金調達は事業拡大の重要な手段の一つです。しかし、いざ融資の話が進むと、銀行の担当者から当たり前のように聞かれる言葉があります。
「今回の設定は、抵当権にしますか? それとも根抵当権(ねていとうけん)で枠を作りますか?」
ここで「銀行にお任せします」と答えてしまうのは、適切とはいえません。
なぜなら、「抵当権」と「根抵当権」は、性質が大きく異なるからです。どちらを選ぶかによって、その後の追加融資のスピード、登記にかかるコスト、そして将来不動産を売却する際の手間や、他行への乗り換え(借換え)の難易度に大きく影響します。
特に、以下のいずれかに当てはまる事業者様にとって、この選択は重要な判断となります。
- 運転資金の借入と返済を定期的に繰り返している
- 将来的に、担保に入れた不動産を売却する可能性がある
- メインバンク以外の金融機関とも付き合いを広げたい
- 事業承継や相続が数年以内に発生する可能性がある
本記事では、金融機関の実務現場で実際に起きている事例を交えながら、教科書的な定義だけでなく、「経営判断としての使い分け」を6000字を超えるボリュームで徹底的に解説します。読み終える頃には、自社の事業戦略に適した選択肢を判断するためのポイントを整理できます。
基礎知識のおさらい ― そもそも何が違うのか?
まずは、基本の「キ」から整理していきましょう。言葉は似ていますが、その性質は「一回きりの切符」と「定期券」ほど違います。
抵当権とは(一回きりの切符)
抵当権(ていとうけん)は、「特定の1つの借入」に対して設定される担保権です。
- 仕組み: 住宅ローンや、工場の建設資金など、「金額」と「返済期間」が決まった一度きりの融資のために設定します。
- 返済後: 借金を全額返済すれば、抵当権の役目は終わります。あとは抹消登記をするだけで、不動産は担保設定が解消されます。
- イメージ: 電車の「片道切符」です。目的地(完済)に着いたら、その切符は回収されてなくなります。もう一度電車に乗りたい(借りたい)場合は、改めて切符を買い直す(登記設定し直す)必要があります。
根抵当権とは(限度額付きのカード/定期券)
根抵当権(ねていとうけん)は、「極度額(きょくどがく)」という枠を設定し、その範囲内であれば何度でも借入と返済を繰り返せる権利です。民法398条の2に規定されている、事業用に特化した強力な権利です。
- 仕組み: 例えば「極度額5,000万円」と設定すれば、現在の借入が0円でも、1,000万円でも、枠が空いている限り、審査(簡易なもの)さえ通ればすぐに資金を引き出せます。
- 返済後: ここが主な違いです。借金を全額返済しても、根抵当権は消えません。「枠」自体は生き続けるため、また資金が必要になったら、登記の手間なく比較的短期間で借入が可能です。
- イメージ: クレジットカードの「キャッシング枠」や「限度額」に近いイメージです。一度契約(設定)しておけば、利用限度額の範囲内で何度でも出し入れが可能です。
【比較整理】経営者が知るべき7つの違い
定義だけでは見えてこない「実務上の違い」を、7つの視点で比較しました。金融機関の担当者が口にしない「実務上の背景」も含めて解説します。
| 比較項目 | 抵当権(スポット融資向け) | 根抵当権(継続取引向け) |
| ① 対象となる借金 | 特定の借入契約1本のみ | 種類(手形貸付・証書貸付など)を指定した一切の債務 |
| ② 追加融資の手間 | 毎回「設定契約」と「登記」が必要 | 枠内なら「登記不要」。借用書だけでOK |
| ③ 完済後の処理 | 自動的に効力を失う(附従性あり) | 完済しても権利は残る(附従性なし) |
| ④ 登記費用(登録免許税) | 借入額の0.4%を毎回支払う | 極度額の0.4%を初回のみ支払う |
| ⑤ 連帯保証人・債務者 | 比較的柔軟に変更・設定可能 | 元本確定前は連帯債務者の設定が困難 |
| ⑥ 金融機関の保全範囲 | 利息は「最後の2年分」まで優先 | 極度額の範囲なら利息・遅延損害金も全額優先 |
| ⑦ 他行からの見え方 | 残高が減れば担保余力ありと判断される | 常に枠一杯借りていると見なされやすい |
解説:特に重要な「コスト」と「信用」の違い
コスト面:頻繁に借りるなら根抵当権が有利
抵当権の設定には「登録免許税」という税金がかかります(借入額の0.4%)。例えば、運転資金3,000万円を年に2回借りる場合を考えてみましょう。
抵当権の場合:
根抵当権の場合(極度額3,000万円設定):
- 設定時:3,000万円 × 0.4% = 12万円の税金 + 司法書士報酬
- 2回目以降:税金0円、登記手続き不要
- 結論: 借り入れを繰り返す事業モデルなら、根抵当権の方がコストパフォーマンスは相対的に有利となる傾向があります。
信用面:他行融資への影響(隠れたデメリット)
根抵当権には「他の金融機関の融資に一定の制約が生じる」という側面があります。
極度額5,000万円の根抵当権がついている物件は、現在の借入残高が1,000万円しかなくても、登記簿上は「いつ5,000万円まで借金が増えるかわからない物件」として扱われます。
そのため、他の銀行(第二地方銀行や信用金庫など)が「二番抵当(2位の担保順位)」で融資をしようとしても、「担保価値が残っていない」と判断され、断られるケースが多いのです。これを「担保の抱え込み」と呼びます。メインバンクとの長期的な関係を前提とする場合は良いですが、複数行取引を目指す場合は注意が必要です。
なぜ事業融資では「根抵当権」が好まれるのか?
銀行員が事業融資で根抵当権を勧めるのには、明確な理由があります。それは銀行側のメリットだけでなく、事業者側の「資金繰りのスピード」に直結するからです。
「手形貸付」や「当座貸越」との相性が良い
製造業や建設業、卸売業など、入金と支払いサイト(期間)がずれる業種では、短期的なつなぎ資金が頻繁に必要になります。
「来週の支払いに1,000万円足りないが、再来週には売掛金が入る」といった場面で、いちいち抵当権設定の登記をしていたら、資金繰りに支障が生じる可能性があります。根抵当権があれば、電話一本、あるいは簡単な伝票処理だけで比較的短期間で資金調達が可能です。この「機動性」こそが、根抵当権の大きなメリットです。
契約書の印紙代や事務手数の削減
借入のたびに金銭消費貸借契約書(巻紙の契約書)を作成すると、金額に応じた収入印紙(2,000円〜数万円)が必要になります。根抵当権に基づく「銀行取引約定書」を結んでおけば、個別の借入は手形や簡単な証書で済み、印紙代や事務コストを大幅に抑制できます。
金融機関との「長いお付き合い」の証明
根抵当権を設定するということは、銀行側からすれば「長期的にこの会社を支える意思表示」でもあります。一度枠を作ってしまえば、他行に浮気されにくくなるため、銀行も安心してメインバンクとしての支援体制を敷くことができます。結果として、金利交渉や経営相談がしやすくなるという副次的なメリットも生まれます。
事業者が押さえておきたい根抵当権の5つの注意点
メリットの多い根抵当権ですが、出口(完済・売却・相続)の場面では、その拘束性が影響することがあります。実務で発生しやすい事例を5つ紹介します。
注意点①:不動産売却時に「抹消」が間に合わない
- 状況: 事業転換のために工場を売却し、その資金で借入を返済しようとした。
- トラブル: 買主は見つかったが、根抵当権の抹消には銀行の稟議(りんぎ)が必要で、さらに「元本確定」という手続きを経なければならなかった。通常の抵当権なら2週間で済む書類の手配に1ヶ月以上かかり、買主が待ちきれずに契約解除になってしまった。
- 教訓: 根抵当権付き物件の売却は、通常より長期化する場合があると心得てください。
注意点②:借入ゼロでも「枠」が消せない
- 状況: 業績が好調で借入を完済した。「もう借金はないから根抵当権を消してほしい」と銀行に依頼。
- トラブル: 銀行担当者から「また借りるかもしれませんし、設定コストも勿体ないので、そのままにしておきましょう(休眠根抵当)」と説得され、抹消に応じない場合がある。実は、銀行側には「担保を外したくない(他行に取られたくない)」という実務上の意図が。
- 教訓: 根抵当権の抹消は、契約者の権利ではなく「双方の合意」が必要です。強い意志を持って交渉しないと、いつまでも登記が残ります。
- 状況: 個人事業主の社長が急逝。根抵当権付きの自宅兼事務所を息子が相続した。
- トラブル: バタバタしており銀行への連絡が遅れた。相続開始から6ヶ月以内に「指定債務者の合意の登記」を行わなかったため、根抵当権の元本が制度上確定してしまった。これにより、以降の追加融資が受けられなくなり、資金繰りが悪化した。
- 教訓: 根抵当権の相続対応は時間との勝負です。これを逃すと、便利な「枠」としての機能が失われます。
注意点④:他行への借換え(リファイナンス)の制約要因
- 状況: 金利の安い他行へ借換えしようとした。
- トラブル: 既存の銀行が根抵当権の抹消書類をなかなか出してくれない。「元本確定の手続きが必要」「本部の承認が下りない」とのらりくらりと長期化し、その間に他行の融資条件の有効期限が切れてしまった。
- 教訓: 根抵当権は「他行への乗り換え防止ブロック」として機能します。借換えには、強固な交渉力と緻密なスケジュール管理が必要です。
注意点⑤:極度額の「増額登記」は意外と高い
- 状況: 業績拡大に伴い、極度額を3,000万円から5,000万円に増やしたい。
- トラブル: 「枠を増やすだけだから簡単だろう」と思っていたら、増額分の登録免許税だけでなく、過去の契約の見直しや追加の印紙代、さらには再度の担保評価が必要となり、新規で借りるのと変わらない手間とコストがかかった。
【実務ガイド】根抵当権をきれいに消すための手順
「売却」や「借換え」のために根抵当権を抹消する必要がある場合、プロはどう動くのか?円滑に進めるためのステップを解説します。
STEP 1:残債確認と「抹消条件」の交渉
まず、現在の借入残高がいくらか正確に把握します。その上で、銀行に対して「全額返済するので、根抵当権を抹消してください」と申し入れます。
ここで重要なのは、「いつ」「いくら払えば」「抹消書類が交付される条件は何か」を、書面やメール等の履歴に残る形で取り決めておくことです。口約束では、後で「やっぱり稟議が通らなかった」と言われる可能性があります。
STEP 2:元本確定(がんぽんかくてい)
根抵当権を消すためには、まず「これ以上、借入と返済を繰り返さない状態(=通常の抵当権と同じ状態)」にする必要があります。これを「元本確定」と言います。
銀行と「元本確定届」を取り交わすことで、変動していた債権額が固定されます。
STEP 3:返済と抹消書類の受領(同時履行)
決済日(売却代金が入る日など)に、銀行に対して全額を振り込みます。実務上は、振込の着金が確認された瞬間に、司法書士が銀行から抹消書類(解除証書、権利証など)を受け取ります。これを「同時履行(どうじりこう)」と言います。
STEP 4:抹消登記の申請
受け取った書類に不備がないか司法書士が確認し、法務局へ抹消登記を申請します。通常、申請から完了まで1週間〜10日ほどかかります。
※根抵当権の場合、このプロセス全体で最短でも3週間、長ければ2ヶ月を見込んでおくのが現実的です。
ケース別・賢い使い分けの判断基準
結局、自社はどっちを選べばいいのか? 事業タイプや目的別に推奨パターンを整理しました。
パターンA:【根抵当権】を選ぶべき事業者
- 業種: 製造業、建設業、卸売業、小売業など
- 資金ニーズ: 仕入れ資金、買掛金の支払い、手形決済、賞与資金など、短期的な資金需要が年数回発生する。
- 特徴: 売上の入金と支払いのタイミングにズレ(サイト)がある。
- 理由: 「必要な時にすぐ借りて、入金があったらすぐ返す」という機動力が重視されるため。登記コストの節約効果も大きい傾向がある。
パターンB:【抵当権】を選ぶべき事業者
- 業種: 不動産賃貸業、サービス業、飲食業(店舗取得時)など
- 資金ニーズ: 店舗購入、機械設備の導入、社屋の建設など、高額かつ長期返済の設備投資。
- 特徴: 一度借りたら、あとは毎月コツコツ返済していくだけ。追加融資の予定は当面ない。
- 理由: 借入ごとに管理が明確になる。また、将来的な売却や借換え(金利の安い銀行への乗り換え)がしやすく、出口戦略が立てやすいため。
パターンC:【抵当権】の検討を推奨するケース
- 3年以内に売却予定がある不動産:売却時のトラブルを防ぐため、シンプルな抵当権にしておくべきです。
- 複数の銀行と付き合いたい場合:特定の銀行に「枠」を押さえられる根抵当権は、他行の参入障壁になります。
よくある質問(FAQ)と用語解説
Q1. 既に「根抵当権」を設定していますが、「抵当権」に変更できますか?
A. 理論上は可能ですが、実務的には手続き負担が大きくなります。一度根抵当権を抹消して、新たに抵当権を設定し直す(借り換えを行う)のが一般的です。その際、再度登録免許税などのコストがかかります。
Q2. 根抵当権の極度額はいくらに設定するのが正解ですか?
A. 一般的には「担保評価額の110%〜120%」あるいは「必要な融資枠の実額」で設定します。必要以上に大きく設定すると、前述の通り他行からの融資が受けにくくなるため、必要最小限+α程度にしておくのが賢明です。
Q3. 元本確定は、銀行側の手続きにより行われることがありますか?
A. あります。例えば、担保不動産が差し押さえられたり、債務者が破産手続きを開始したりした場合です。また、銀行側が「これ以上貸せない、回収局面に入る」と判断した場合に、元本確定請求をしてくることもあります。
Q4. 連帯保証人はどうなりますか?
A. 根抵当権の場合、包括的な連帯保証契約を結ぶことが一般的です。「極度額の範囲内でのすべての借入」に対して責任を負うことになるため、通常の保証人よりも責任範囲が広くなる傾向があります。保証人になる方への十分な説明が必要です。
専門家の視点 ― セゾンファンデックスが提案する解決策
ここまで解説してきた通り、抵当権と根抵当権の選択は、単なる手続きの問題ではなく、「会社の財務戦略に関わる重要な要素」です。
しかし、多くの事業者様は日々の業務に追われ、銀行主導で提示された条件のまま契約してしまったり、逆に根抵当権のメリットを十分に活用できていなかったりするのが実情です。
- 「現在の銀行との根抵当権設定が制約要因となり、追加融資が受けられなかった」
- 「売却したいが、根抵当権の抹消交渉に時間がかかっている」
- 「決算書の内容だけでなく、不動産の価値を適切に評価してほしい」
こうしたお悩みをお持ちなら、不動産担保ローンで豊富な事例を持つセゾンファンデックスにご相談ください。
セゾンファンデックスが選ばれる3つの理由
1. 事業者特有の事情を汲んだ「オーダーメイド提案」
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2. 根抵当権の「借換え・整理」にも強い
他行で設定された根抵当権の抹消手続きや、複雑な権利関係の整理も、豊富な実務経験を持つスタッフがサポートします。「銀行との交渉が負担が大きいと感じる」と諦める前に、現状整理としてご相談いただくことも可能です。他行の根抵当権を抹消し、当社で新たに融資を実行する「借換え」の実績があります。
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銀行の根抵当権融資は、稟議に時間がかかることがネックになりがちです。セゾンファンデックスは、ノンバンクならではの機動力で、最短即日回答(※)も可能なスピード審査を実現しています。「今すぐ資金が必要」といった資金ニーズにお応えします。
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まとめ
不動産担保融資における「抵当権」と「根抵当権」には、制度上の重要な違いがあります。
- 抵当権 = 「完了」を目指す借入(設備投資・売却前提)
- 根抵当権 = 「継続」を前提とした借入(運転資金・反復利用)
この原則を理解し、金融機関と対等に交渉できるようになれば、資金調達はより柔軟で計画的なものになります。
本記事が、貴社の資金繰りと事業発展の一助となれば幸いです。

