この記事の監修者 |
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氏名 | 熊谷正和(くまがやまさかず) |
保有資格 | CFP(日本FP協会認定)、1級ファイナンシャルプランニング技能士 |
所属 | ライフアート・コンサルティング株式会社 |
監修日 | 2023年2月28日 |
はじめに、マンションの管理費・修繕積立金とはどのような費用なのかを整理しておきます。それぞれの相場についても紹介しますので、現在入居中の物件と比較してみましょう。
(1)マンションの管理費・修繕積立金とは?
マンションの管理費・修繕積立金は、それぞれ目的が異なります。主な用途は次の通りです。
・管理費:共用部分の日常管理に必要な費用
・修繕積立金:大規模修繕やメンテナンスに必要な費用
管理費はマンションの共用部分を維持管理するための費用です。共用部分の光熱費や清掃にかかる費用、照明の交換費用、火災保険料、管理会社への業務委託料などは管理費でまかなわれています。
一方、修繕積立金は定期的な大規模修繕に備えて少しずつ積み立てておく費用です。外壁の塗り替え、給排水管の交換などのほか、災害時に生じた損傷を修繕する際にも使われます。
管理費・修繕積立金は一度決定されれば将来にわたって一定額とは限りません。状況によっては値上がりすることもある点に注意しましょう。住宅ローンの返済と併せて、管理費・修繕積立金の支払いは余裕をもって計画しておく必要があります。
(2)管理費・修繕積立金の相場は?
マンションの管理費・修繕積立金の相場は以下の通りです。
・管理費:15,956円/月
・修繕積立金:12,268円/月
参照:
国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」
管理費・修繕積立金は、マンション全体の管理・修繕に必要な費用を戸数で按分するため、戸数が多いマンションほど割安になる傾向があります。ただし、マンションによって共用部分の設備はまちまちです。共用部分の設備が充実している物件ほど、管理費や修繕積立金の負担も大きくなると考えてよいでしょう。
修繕積立金は、外壁の面積にも影響を受けます。階数が多いマンションほど修繕が必要な外壁の面積が大きくなるため、修繕積立金も高くなるケースが多いのです。
修繕積立金が将来的に値上がりするかどうかは、積立方式によって判断できます。積立方式は「均等積立方式」と「段階増額積立方式」の2種類のうちいずれかです。
均等積立方式であれば、将来にわたって必要となる修繕費用を均等に割っているため値上がりすることはありません。一方、段階増額積立方式では築年数が経過するにつれて必要な積立額が増えていきます。5年、10年などの区切りごとに、修繕積立金が見直されるのが一般的です。
段階増額積立方式を採用しているマンション管理組合のうち、過去に修繕積立金を増額したことがあるケースは81.7%にのぼります。とくに直近5年以内に増額したケースが68.1%を占めていることから、近年は修繕積立金が増加傾向にあるといえるでしょう。
参照:
国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」
(3)滞納の状況
マンションの管理費・修繕積立金を滞納している住戸がある管理組合の割合は下記の通りです。
・3ヶ月以上滞納:24.8%
・6ヶ月以上滞納:15.2%
・1年以上滞納:16.4%
滞納住戸割合は「1%超2%以下」が8.3%と最も多く、次いで「1%以下」が6.7%という結果でした。
参照:
国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」
管理費・修繕積立金を滞納すると、マンションの住環境が悪化する恐れがあります。共用部分の清掃や管理が行き届かなくなることや、修繕費用をまかなえず他の住人が負担しなければならない可能性があるのです。
さらに、管理費・修繕積立金の滞納はマンションの資産価値にも影響を及ぼします。将来的にマンションを売却する際、滞納分の支払いは売主から買主へと引き継がれるからです。滞納を引き継ぎたい買主はまずいないので、マンションが売れなくなる可能性があります。