離婚の際に住宅ローンが残った家を売却する場合、住宅ローンの契約内容や家の価格などに応じて対応が異なります。
- (1)オーバーローンのとき
- (2)アンダーローンのとき
- (3)連帯保証のとき
- (4)連帯債務のとき
- (5)ペアローンのとき
上記5つのケースに分けて、売却する際のポイントや注意点を見ていきましょう。
(1)オーバーローンのとき
オーバーローンの場合、家の売却代金だけでは住宅ローンを完済できず、抵当権を抹消できません。
そのため、預貯金などの自己資金で不足分を補い、家の売却と同時に住宅ローンを完済する必要があります。
具体的には、家の売買契約を締結して売却代金を受け取り、自己資金を加えて住宅ローンを一括返済します。同時に抵当権を抹消できる書類と共に買主へ家を引き渡す流れです。
住宅ローンの残債が多く、一括返済できるだけの自己資金がない場合は、離婚後に夫婦のどちらかが継続して住むケースが多いです。
どうしても家を処分したい場合は、任意売却という選択肢もあります。
任意売却とは、住宅ローンの借入先の金融機関の許可のもと、条件つきで抵当権を解除して家を売却することです。家の売却代金でローンの一部を返済し、残りは売却後に返済を続けます。
任意売却はローンを一括返済できなくても家を売却できますが、将来別の融資を受けにくくなるなどのリスクがある売却方法です。手続きを進める前に慎重に検討しましょう。
任意売却について詳細は後述します。
(2)アンダーローンのとき
アンダーローンの場合は家の売却価格が住宅ローンの残債を上回っているため、家の売却と同時に住宅ローンを一括返済できるでしょう。
なお、夫婦生活のために取得した家は夫婦の共同財産とみなされるため、夫婦どちらか単独の名義の家であっても売却した利益は財産分与の対象となります。
売却代金から住宅ローンの返済分と家の売買手数料などを差し引き、残りの金額を折半するケースが多いです。
ただし、離婚後の就労状況や離婚理由などの考慮すべき事情がある場合は、納得できるまで協議して利益の配分を決めましょう。
参照元:
法務省|財産分与
(3)連帯保証のとき
住宅ローンを組む際に夫婦のどちらかが債務者となり、もう一方を連帯保証人に指定したケースもあります。
アンダーローンの場合、家の名義人の意思で家を売却して住宅ローンを完済すれば、離婚後に問題になる可能性は低いです。
しかし、オーバーローンの場合は住宅ローンを一括返済できないため、債務者と連帯保証人の両方が引き続き返済義務を負います。
債務者が住宅ローンを返済できなくなれば、離婚していても連帯保証人として代わりに返済しなければいけません。
離婚後に突然連帯保証人宛ての住宅ローンの請求が届き、トラブルになるケースは多いです。
なお、住宅ローンは契約時の債務者や連帯保証人の返済能力を根拠に融資を受けているため、あとから連帯保証人を外したり変更したりすることは困難です。
家を売却せずに所有し続ける場合は、事前にローンの返済計画について夫婦間で協議し、離婚協議書に残りのローンをどちらが支払うかなどの取り決めを明記することをおすすめします。
(4)連帯債務のとき
連帯債務とは、ひとつのローンに対して複数人で債務(返済する義務)を負うことを指します。例えば、住宅ローンの場合は夫婦や親子で連帯債務者になるケースが多いです。
連帯保証人は債務者が返済できなくなった場合のみ返済義務を負いますが、
連帯債務者は全員が同等の返済義務を負う点が異なります。
離婚する際は、アンダーローンであれば家を売却して住宅ローンを一括返済できるため問題が生じることは少ないでしょう。
オーバーローンで家を売却できない場合は、離婚後も連帯債務者全員が引き続き返済義務を負います。
連帯保証と異なり、主債務者(ローンの契約者)の返済が滞っていなくても支払い請求を受ける可能性がある点に注意が必要です。
離婚後の金銭トラブルを避けるには、連帯保証の場合と同様に離婚協議書で取り決めておくか、離婚の際に自己資金で補いつつ住宅ローンを一括返済しておきましょう。
(5)ペアローンのとき
ペアローンでは夫婦が個別に住宅ローンを組みますが、互いの連帯保証人になる「たすきがけ保証」である点が離婚後に障害になる可能性が高いです。
アンダーローンの場合は、離婚の際に夫婦の同意のもと家を売却すれば住宅ローンの残債を清算できます。
オーバーローンの場合、ローン返済に必要な自己資金を用意できるまでは家を売却できず、夫婦それぞれが住宅ローンの返済を続けなければなりません。
さらに、相手方が返済できなくなれば、連帯保証人としての返済義務も負うことになります。
できる限り家を高く売却できる不動産会社を探し、離婚時点で住宅ローンを清算しておくことをおすすめします。