この記事の監修者 |
---|
氏名 | 吉田雅一(よしだまさかず) |
保有資格 | 税理士 |
所属 | L&Bヨシダ税理士法人 |
監修日 | 2023年2月28日 |
相続の対象となる資産が持ち家のみの場合、まずは親に遺言書がないかを確かめましょう。遺言書が作成されているときは、原則として遺言書の内容に沿った遺産分割を行うことになります。
しかし遺言書がないときは、持ち家をどのような形で遺産分割するのかを、兄弟の間で話し合って決める必要があります。このような話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割には主に四つの方法があり、遺産内容に合わせてどの方法で分割するのかを決定しなければなりません。
(1)現物分割
相続財産をそのままの形で分割することです。この方法だと、たとえば自宅は長男に、親が残した預貯金は次男に、株式は三男にといった形で遺産分割を行います。
現物分割の場合、「預貯金は誰に何割、株式は誰に何割」と決める必要がないので、手続きは簡単です。また、各財産を分割するための事務的な作業も必要ありません。
ただし、「自宅を相続した人が最も有利」など、法定相続人の間で不公平感が生じやすいなどの難点があります。
(2)換価分割
相続財産を売却して現金化し、それを分割する方法です。
対象となる財産が現金となるため、相続人の間で公平な分割を行えます。
しかし最大の難点は、財産を現物のままで相続できないという点です。たとえば、家を相続する場合、その家を第三者に売却することにもなるため、そのまま住み続けられなくなることもあります。
さらに、不動産の売却に手間がかかるというデメリットがあります。不動産の売却は、ある程度の時間がかかるため簡単に売却することはできませんが、売却にそう長く時間をかけられません。相続発生から10カ月以内に相続財産を分割し、相続内容を確定させ、相続税の申告および納税まで済ませなくてはならないからです。申告・納税の期限を過ぎると延滞税が加算されることになります。
(3)代償分割
相続人の一人が法定相続人として受け取るべき価値を超える財産を相続したときに、他の相続人にその差額(代償金)を現金などで支払う方法です。
親と同居していた相続人の一人が親の持ち家を相続して住み続ける場合だと、専門家に依頼して持ち家の時価総額を計算し、他の兄弟には相続分の割合で代償金を支払うという形を取ります。
また、財産を相続した人は、代償金とは別に相続税の納税資金も用意しなければいけないので、納税資金も大きな負担になります。
したがって、この方法だと、財産を相続した本人に、代償金と相続税納税のための現金・預貯金が必要です。
(4)共有分割
相続財産の一部もしくはすべてを、複数の相続人が共同所有して相続する方法です。財産を売却せずに、かつ相続人の間で公平に分割することができます。
ただ、共有する財産を売却して現金化したい場合、原則、ほかの共有者全員の合意が必要です。そのため、財産に対する自由度は低くなります。