では実際に、老後を安心して暮らすためにはいくらの貯蓄が必要なのでしょうか。
(1)高齢無職世帯の家計収支
前述の総務省の家計調査報告(家計収支編 2022年)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支は、実収入が246,273円でそこから社会保険料や税金などを差し引いた可処分所得は214,426円です。
これに対して、消費支出は236,696円と収入より支出の方が多くなっており、毎月22,270円の不足が生じています。
そして、65歳以上の単身無職世帯の家計収支をみると、実収入が134,915円、可処分所得が122,559円です。消費支出は143,139円となっており、毎月20,580円の不足となっています。
夫婦世帯、単身世帯ともに毎月20,000円強の不足が生じており、年間に換算すると約250,000円の不足が発生することになります。つまり、この不足分を補えるだけの貯蓄が必要だということになるわけです。
(2)老後の貯蓄が少ないと何が困る?
先述の収支金額は平均値であり、そのなかで一番大きな割合を占めているのは食費です。これは物価の上昇に伴う食料品の値上げが影響しており、これは今後も続くと予想されます。
次いで多いのが、「その他の消費支出」に含まれる雑費や交際費です。
ゆとりのある老後を過ごしたいなら、交際費などの娯楽費がさらに必要ですし、高齢になるにつれ病気にかかる割合も増えてくるため、病気やケガに対する治療費も準備しておかなければなりません。
さらに、冠婚葬祭費や孫へのお小遣いなどさまざまな支出が必要になります。
生命保険文化センターの
「2022(令和4)年度 生活保証に関する調査」によると、夫婦2人が老後生活を送る上で必要と考えられている最低日常生活費は平均で月額23.2万円となっています。
また、経済的にゆとりのある老後生活を送るための費用として、上記の最低日常生活費以外に必要と考えられる額は平均で月額14.8万円という結果でした。
したがって、夫婦2人がゆとりある老後生活を送るための生活費は合計で月額38万円となり、前述の総務省家計調査から、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支の可処分所得は約21.5万円でしたので、月額16.5万円、年間で約198万円が不足します。
さらに、年間約198万円が65歳から仮に85歳までの20年間必要だとすると、3,960万円の貯蓄が必要という計算になります。